円高・円安における輸入と輸出の考え方

日本国内で生活をしていると「円高」「円安」「ドル高」「ドル安」などといった単語を耳にすることがありますが、それらの違いをよく理解していないという方は多いのではないでしょうか。

また、円高や円安は輸出入においてどのように影響するのかいまいち分からない、よく忘れてしまうということもありますよね。

この記事では円高・円安の覚え方と、これらによる輸入や輸出への影響について詳しく解説します。

円高・円安の仕組みと覚え方

円高・円安が輸出入へどのように影響するのかを考える前に、まずは「円高」と「円安」の仕組みをいま一度しっかりと理解できるようにしておきましょう。

  1. 円高とは
  2. 円安とは

この項目では円高と円安に仕組みと覚え方について解説します。

円高とは

円高を一言で言うと「日本円の価値が高くなった状態」のことです。

例えば「1ドル=200円」だったものが「1ドル=100円」になった場合、安いお金でドルの商品を購入できるということになります。

日本円よりもドルの価値が低い状態なので「円高・ドル安」と呼ばれることもありますよ。

  • 円高の具体例

・1ドル=200円が1ドル=100円になった場合(この状態を円高と呼びます)

従来(1ドル=200円):300ドルの洋服は日本円に換算すると60,000円で購入できる

円高(1ドル=100円):300ドルの洋服は日本円に換算すると30,000円で購入できる

円安とは

日本円の価値が低くなった状態」のことです。

これは円高とは真逆で、例えば「1ドル=100円」だったものが「1ドル=200円」になった場合、従来よりも高いお金を出さないとドルの商品を購入できないということになります。

日本円よりもドルの価値が高い状態なので、「円安・ドル高」と呼ばれることもあります。

  • 円安の具体例

・1ドル=100円が1ドル=200円になった場合(この状態を円安と呼びます)

従来(1ドル=100円):500ドルのバックを日本円に換算すると50,000円で購入できる

円安(1ドル=200円):500ドルのバックを日本円に換算すると100,000円を出さなければいけない

円高・円安の輸入と輸出への影響

「円高=日本円の価値が高い」「円安=日本円の価値が低い」ということは理解できたでしょうか。

続いて、円高・円安による輸入と輸出への影響について解説します。

円高のときの輸入と輸出への影響

「円高」は日本円の価値が高い状態、日本円よりもドルが安い状態です。

そのため輸出入においては「輸入」が有利な状態と言えます。

冒頭でお伝えした具体例をもとに、「円高」のときの輸入と輸出について考えてみましょう。

  • 輸入への影響

1.1ドル=100円(円高)のとき、300ドルの洋服をアメリカから輸入する際は日本円にして30,000円で商品の仕入れができる。

2.1ドル=200円(円安)のとき、300ドルの洋服をアメリカから輸入したい場合、仕入れのために60,000円の出費が発生してしまう。

結論:輸入をする際は「円高」のタイミングで行う方が有利と言える。

  • 輸出への影響

1.1ドル=200円(円安)のとき、50,000円のバックをアメリカに輸出するとアメリカでは250ドルで販売できる。

2.1ドル=100円(円高)のとき、50,000円のバックをアメリカに輸出するとアメリカでは500ドルで販売することになり、円安時よりも売れにくくなる。

結論:「円高」の時に輸出を行うのは不利と言える。

円安のときの輸入と輸出への影響

ここまでくると「何となく覚えてきた」という方もいるかと思いますが、「円安」は日本円の価値が低い状態、日本円よりもドルが高い状態です。

円安のときの輸出入においては「輸出」が有利な状態と言えます。

  • 輸出への影響

1.1ドル=200円(円安)のとき、30,000円の洋服をアメリカに輸出するとアメリカでは150ドルで販売できる。

2.1ドル=100円(円高)のとき、30,000円の洋服をアメリカに輸出するとアメリカでは300ドルで販売することになる。

結論:円安のときに輸出をすると、同じ日本円価格でもアメリカでは安く販売できるため有利と言える。

  • 輸入への影響

1.1ドル=200円(円安)のとき、500ドルのバックを輸入すると日本円にして100,000円で仕入れることになる。

2.1ドル=100円(円高)のとき、500ドルのバックを輸入すると日本円にして50,000円で仕入れることができる。

結論:円安のときに輸入をすると、同じ米ドル価格でも日本円では高くなるため不利と言える。

「円高」「円安」の簡単な覚え方

ここまで円高と円安、輸出入への影響について詳しくお伝えしましたが、それでも覚えにくいという方もいますよね。

  • ドルが下降したら「円高」
  • ドルが上昇したら「円安」

あくまでも表面的な覚え方ではありますが、ひとまずは上記の2点を覚えておけば間違いありません。

ドルが下降しているのか、上昇しているのかを見るだけで円高・円安が判断できるようになります。

仕組みが覚えにくいという方ははじめに上記の覚え方で円高と円安を判断し、その後トレーニングのような感覚で「円高ということは、円の価値が高いから…」「円安ということは、円の価値が低いから…」と考えていくと、いずれ仕組みも覚えられるようになりますよ。

日本にとって「円高」「円安」はどっちが良いの?

円高のときは輸入が有利、円安のときは輸出が有利であることがお分かりいただけたかと思います。

そこで気になるのが「結局、日本にとって円高と円安ではどちらが良いのか」ということではないでしょうか。

日本と海外ではすでに昔からモノやサービスの売買が行われており、切っても切れない関係となっています。

この項目では円高と円安における各メリット・デメリットについてまとめました。

円高のメリットとデメリット

「円高のときは輸入が有利」とお伝えしたように、円高の最も大きなメリットは海外の商品やサービスを安く購入できる点にあります。

例えば昨今価格の高騰が続いている食材や、石油、ガスなどのエネルギー資源も、円高のタイミングでは安くなるため生活が楽に感じられることもあるでしょう。

一方で円高のデメリットは海外での稼ぎを日本円に転換した際、顕著に現れます。

例えば日本の経済を率いるほどの大企業の多くは、海外への輸出によって多額の利益を得ているケースも珍しくありません。

円高は裏を返すと日本の商品が海外で売れにくくなるということなので、急激な円高に見舞われると日本経済に悪影響を及ぼしてしまうことが考えられます。

円安のメリットとデメリット

円安のタイミングでは「輸出が有利」となるため、海外での稼ぎを日本円に転換した際の金額が大きくなるメリットがあります。

輸出を行う日本の企業であれば、円安であるほど売り上げが大きくなるほか輸出する商品やサービスの価格も調整できることから、国際的な競争力を高められることもあるでしょう。

一方で円安は日本円よりも外貨の価値の方が高い状況であるため、海外から仕入れる商品やサービスの価格は必然的に高くなってしまう点が大きなデメリットです。

エネルギー資源や食材などの高騰により生活が圧迫されるほか、海外旅行なども割高になることが考えられます。

まとめ

一見すると少々ややこしく、仕組みを忘れてしまいがちな「円高」「円安」ですが、私たちの社会経済と深く関わっているということを忘れてはなりません。

・円高は日本円の価値が高いため輸入に有利
・円安は日本円の価値が低いため輸出に有利

上記2点のように、「どちらが日本円の価値が高いのか、安いのか」を理解することで輸出入への影響もイメージしやすくなるでしょう。