海外で求められるブランド価値!輸出商品の戦略的アプローチ

海外で求められるブランド価値!輸出商品の戦略的アプローチ
T.ナギサ
この記事の執筆者
ECコンサルタント|元EC事業会社のマーケ担当→大手メディア編集・制作を経て入社。D2Cブランドや中小企業のEC事業立ち上げ・改善支援を中心に活動中。特に「商品はあるが売上が伸びない」「運用が属人化している」などの課題解決が得意です。戦略設計から商品ページ改善・SNS活用まで一気通貫でサポートします。クライアントの売上向上と業務効率化にコミットする現場主義タイプ。
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コロナ以降、世界の購買行動は「安さ」よりも「意味」を重視する方向へ大きくシフトしました。

輸送費高騰や地政学リスクが拡大するなか、単に“Made in Japan”という原産地ラベルだけでは海外バイヤーの心を動かせません。重要なのは、「その商品がなぜ⾝近にあるべきか」を、ストーリーと証拠の両輪で示すブランディングです。
事実、2024年のBest Japan Brandsでは、顧客価値と社会価値を両立させた企業がブランド価値を平均6.7%伸ばしました。

 本記事では、海外におけるブランド価値の本質から、現地ニーズを捉えるリサーチ手法、SNS時代のプロモーション戦略、さらにマレーシアでヒットした日本企業の具体例までを網羅。記事を読み終えるころには、あなたの輸出ビジネスを「価格競争」から「価値創造」へ押し上げる実践プロセスが手に入ります。

海外におけるブランド価値の重要性

輸出ビジネスで最初に直面する壁は「認知」よりも「信頼」です。見知らぬ国の消費者にとって、ブランドは“品質保証書”と同義。

Interbrandの世界ランキングでは、トヨタやユニクロのように機能価値+文化価値を掛け合わせた企業ほど評価額が高まる傾向が確認されています。

本節では、①ブランディングが海外展開を加速させる理由、②日本製品が持つ独自の強み、③先行事例に学ぶ構築ステップを解説します。

なぜブランディングが海外進出に不可欠なのか

海外市場では“価格破壊”を狙う新興メーカーが次々参入しますが、価格優位は長続きしません。競合が値下げ攻勢を仕掛ければ利益は瞬時に消失し、撤退を余儀なくされます。

その点、ブランド価値は模倣されにくい参入障壁です。トヨタが世界6位のブランド価値(728億ドル)を維持しているのは、品質・安全性のイメージを50年以上積み上げてきた結果であり、1年や2年で真似できるものではありません。

さらに、JETROが2024年に米国で開催したフード&ビバレッジ・ショーケースでは、ブランドストーリーを訴求した出展企業の商談成約率が平均より38%高かったと報告されています。

ブランディングこそ、為替や物流コストの変動に左右されない“無形資産”なのです。

日本の輸出ビジネスにおけるブランドの役割

日本企業は伝統的に品質管理技術力で評価されていますが、その「機能的メリット」が必ずしも購買決定の最重要要因とは限りません。

JETROが2025年3月に実施した米国日系企業調査では、回答企業の52%が「現地化されたブランド体験が価格競争力を凌駕する」と回答しました。 つまり“高品質”を超えて、「生活者の価値観に寄り添うブランド姿勢」を示すことが成果を左右します。

たとえば、ASICSはランニング文化を支援するコミュニティ施策で世界的ファンベースを獲得し、直近1年間でブランド価値を28%伸長させました。

機能価値+情緒価値を融合させることこそ、日本企業がグローバルで勝つ鍵です。

成功事例から学ぶ海外市場でのブランド構築

オンitsuka Tigerはレトロスニーカー「MEXICO 66」を軸に、ミラノ・ファッションウィークや限定店舗体験を通じて“ジャパニーズ・モダンラグジュアリー”を訴求。2024年に売上+58.3%、利益+111%を達成しました。

一方、資生堂はパーソナライズ美容体験をDXで実現し、「Beauty Wellness企業」へパラダイム転換。2030年までに世界No.1ビューティーブランドを目指すロードマップを公表し、海外投資家から高評価を受けています。  

これらの共通項は、伝統×革新のストーリー設計顧客参加型コミュニティ形成。模倣困難な世界観を醸成することで価格弾力性を高めています。

輸出商品のブランディング戦略

輸出商品のブランディング戦略

ブランディングの成否は「製品ローンチ前」の準備で8割決まります。本節では、(1)市場ニーズを可視化するリサーチ、(2)現地文化に合わせたマーケティング4P最適化、(3)SNS時代に欠かせないプロモーション手法を具体的に解説。

クロスボーダーECが年率16.1%成長するなか(2024年時点) 、オンラインとオフラインを融合させた“ハイブリッド戦略”が必須です。

市場ニーズを理解するためのリサーチ方法

まずはマクロ→ミクロの順で情報を絞り込みます。①政府・業界統計(JETRO、各国商工会議所)、②SNSリスニング、③現地消費者インタビューの三段階アプローチが基本

JETROの海外事業支援ページには各国の需要動向レポートとバイヤーリストが無料公開されており、初期コストを抑えつつ仮説を構築できます。

次に、SNS解析ではTikTokのキーワードインサイト、Instagramハッシュタグ分析を活用。最後に現地パートナーを通じてユーザーインタビューを行い、“言語化されていない不満”を掘り起こします。

リサーチ手法概算コストスピード情報深度最適フェーズ
政府統計・JETRO資料市場選定
SNSリスニングコンセプト検証
ユーザーインタビュー製品改良・UX改善

現地市場に合わせたマーケティング戦略

現地化の要は「4P(Product, Price, Place, Promotion)」全体最適です。製品面では、パッケージサイズや成分表示をローカル法規に合わせるだけでなく、“味覚”や“色彩”の文化差も考慮。価格設定は購買力指標だけでなく、「競合とのニッチ差別化」や「関税」を加味したプライシングが求められます。

販路は越境ECのほか、TikTok Shopが日本でも拡大しており、ライブコマースを起点に商品認知→購入に至るプロセスが短縮。

プロモーションではUGC(ユーザー生成コンテンツ)を軸に、レビュー動画やリアルタイムQ&Aを組み込むことでCVRが平均1.7倍に向上した事例が報告されています。

競争力を高めるためのプロモーション手法

①インフルエンサーマーケティング:マイクロインフルエンサー(フォロワー1万〜5万)は広告単価が低く、エンゲージメント率はメガ層の2.4倍。SNS広告費が1.1兆円を突破した日本でも成果報酬型案件が拡大中です。

②オンライン×オフライン融合:海外展示会で獲得したリードを、TikTokのハッシュタグチャレンジに誘導するクロスチャネル戦略。JETRO主催イベントでは、展示会来場者の44%が後日SNSフォローを行い、EC購入率が22%向上しました。

③エンゲージメントコミュニティ:Calbeeがコミュニティプラットフォーム「Commune」を活用し、ブランドファンと共創型商品を開発。結果、ロイヤルユーザーの購買頻度が1.6倍に増加しています。

海外進出に必要な準備と実施

海外進出に必要な準備と実施

支援機関の活用、ターゲット別戦略、学びの場づくり。この3点を押さえることで、限られたリソースでも海外展開を加速できます。特に女性消費者は世界の消費支出の70〜80%に影響力を持ち、その購買額は31.8兆ドルに上ります。

本節では、実務的なサポートを受けつつ、女性市場を攻略し、セミナー活用で組織知を高める方法を紹介します。

JETROなどの支援機関を活用するメリット

JETROは世界90拠点以上で専門家サポートを提供し、展示会出展料の一部補助や現地法規アドバイスを無償で実施しています。  

特筆すべきは「新輸出大国コンソーシアム」のハンズオン支援。専門家が半年間伴走し、現地パートナー紹介から補助金申請まで一括支援するため、SMEでも短期間で市場検証が可能です。

女性消費者をターゲットとした展開方法

世界の消費決定権の約75%を女性が握り、2028年には discretionary spending の75%を支配すると予測されています。  

商品開発では「セルフケア」「サステナビリティ」「共感ストーリー」の3要素が鍵。Swiss時計業界がジェンダーニュートラルデザインで売上を伸ばした例のように、性別固定観念を排したメッセージが共感を呼びます。  

SNS施策では、女性インフルエンサーとのライブ配信で“共感型レビュー”を実践。平均視聴維持率が15%→28%へ向上したケースが報告されています。

実施したセミナーの効果と学び

導入期は「学びの内製化」が肝心。輸出担当者が月次でウェビナーや社内共有会を開き、成功メソッドを横展開することで、属人化リスクを軽減します。JETRO共催セミナーでは「現地税制」と「EC物流」などテーマ別に専門家が登壇し、アンケートで95%が「即日業務に活用できた」と回答。

録画アーカイブをナレッジベース化し、新任担当者も短期間でキャッチアップできる仕組みを構築しましょう。

具体的な輸出成功ストーリー

具体的な輸出成功ストーリー

机上論だけでは説得力がありません。本節では、マレーシア市場でヒットした事例を中心に、SNSとネットワーク構築がどのように売上へ直結したかを解説。東南アジアのスナック市場トレンドや、TikTokを駆使したUGC戦略も紹介します。

マレーシア市場での成功事例

CalbeeはマレーシアのローカルブランドJack ’n Jillと共同開発し、“ローカルフレーバー×日本式品質”を武器にシェアを急拡大。健康志向トレンドに合わせ、ノンフライ製法と現地の「ココナツシュガー味」を投入した結果、発売6か月でカテゴリ5位に浮上しました。

成功要因は①現地パートナーとの共同R&D、②現地インフルエンサーを起用した試食動画、③伊勢丹クアラルンプール店でのポップアップによる体験価値提供です。

SNSを活用したプロモーション戦略

同社はTikTokで#AsianSnackChallengeを実施し、ユーザーが試食リアクション動画を投稿すると割引クーポンが当たるUGC企画を実装。投稿総再生回数は1億回を突破し、EC売上がキャンペーン期間中に3.2倍へ。  

ポイントは①参加ハードルを下げる簡単フォーマット、②リアル店舗と連携したクーポン設計、③エンゲージメント指標(共有・保存)を重視したクリエイティブ最適化です。

現地でのネットワーク構築とバイヤーへのアプローチ

JETRO主催のフードエキスポで得た名刺リストを、展示会後48時間以内にフォローアップメール+LinkedIn接続で関係強化。さらに、現地日系商工会議所の月次ミートアップで試食会を開催し、リテーラーMDとの商談に発展しました。

結果、現地大手スーパーAEONでの常設棚獲得につながり、年間1億円規模の売上を創出。  

“展示会→オンライン→オフライン商談”という三段活用が成約率を高める鉄板フローです。

輸出商品ブランディングの未来

輸出商品ブランディングの未来

グローバル市場はサステナビリティ、AI、そしてZ世代の台頭で常に変化しています。日本企業が直面する課題と可能性を整理し、未来志向のブランド戦略を提案します。

日本企業が直面する課題と可能性

課題は「資源高+円安」に伴うコスト圧力、そして多様化する消費価値観への対応不足。一方で、円安は“お得感”を生み、ジャパンクオリティへの需要は底堅い。Interbrand 2025では、ドン・キホーテなど価格+体験価値を両立するブランドが新規ランクインしました。  つまり価格優位と体験価値を両立できれば、逆風を追い風に変えられます。

海外市場の変化に適応するための戦略

マイクロターゲティング×AI:SNS広告でAI自動細分化セグメントを活用し、CVR+23%の事例が報告。

サステナブル・ブランディング:CO₂排出量やリサイクル材比率を透明化し、“環境ラベル”で差別化。

越境ライブコマース:TikTok Shopはライブ機能で即時購入まで完結する仕組みを強化し、日本市場でも導入が加速。

ローカル展開の成功に向けた実践的提案

  1. 現地共創:パートナー企業やクリエイターと共同開発し、ローカル文化を取り入れた限定商品を投入。
  2. コミュニティ育成:公式アプリでポイント+コミュニティ機能を実装、UGCを日常的に生成。
  3. 学習フィードバックループ:KPIを「売上」→「エンゲージメント」「リピート率」に再定義し、ブランド資産を定量化。
  4. 持続的イノベーション:R&D拠点やスナックラボ(Calbee USAの例)のように、現地ニーズを迅速に製品化する体制を構築。

まとめ & 行動チェックリスト

ステップ実行アクション社内担当期限
①市場選定JETROレポート+SNSリスニングでターゲット市場を絞る海外事業部今月末
②ブランド設計「機能価値×情緒価値」を定義し、タグラインを策定マーケ部翌月15日
③現地検証テスト販売+ユーザーインタビューで仮説検証営業・CS連携3か月後
④拡販フェーズライブコマース+展示会で販路拡大販促チーム6か月後
⑤コミュニティ化オウンドアプリでUGC施策を運用開始DX部門通年

上記フローを踏まえ、「無形資産としてのブランド」を積み上げることこそ、輸出ビジネスを長期にわたり利益体質にする最短ルートです。今日から一歩踏み出し、世界に響く“あなたならでは”のブランド価値を創造しましょう。

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この記事を書いた人

ECコンサルタント|元EC事業会社のマーケ担当→大手メディア編集・制作を経て入社。D2Cブランドや中小企業のEC事業立ち上げ・改善支援を中心に活動中。特に「商品はあるが売上が伸びない」「運用が属人化している」などの課題解決が得意です。戦略設計から商品ページ改善・SNS活用まで一気通貫でサポートします。クライアントの売上向上と業務効率化にコミットする現場主義タイプ。

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